about  log  antenna  

■2018/06/24 『踵を浮かせて』
 今思えば馬鹿みたいだね。夜が明けるのも待てずにぼんやりと窓の外を見つめていた。指先は何もとらえずいた。覚めるまでの夢だなんてことは知っていたはずだね。立ち上がることだっていつだってできたはずなのにね。

 真剣な顔で「たましいのおもさ」なんてことを話した午後。夕闇はいつもよりも濃かったね。「あさがくればなにもかもいいかもしれない」なんてことを素朴に信じた。川辺の道を手を繋いで歩いたね。ああそうだ、昨日の夜、僕たちは田舎の片隅で、静かな農道を蛍に包まれて言葉少なに歩いたんだ。聞こえる? 未来には、そういった奇跡のような光すらもありえたのだよ。あの頃には想像することもできなかったけれども。聞こえる?

 ふざけたステップを踏んで、両手を広げたり振り回したりもして。零れ落ちてしまったものはもう見失ってしまっていて。夜空は片端から埋もれていく。君の顔を探そうとして、僕はその頬が濡れていることに気づいた。重ねられた手にはそれほどの意味はなかったのかもしれない。夜空を全部。光を一つ二つ。朝はまだまだ遠いのだ。過去から未来までの中間地点が今だとして、僕はそれを到底受け入れることなんてできやしない。

 僕達はまた夢を見る。踵を浮かせて。夢みたいな夢を。蛍の光のような夢を。いつか見たような、そんな夢ばかりを願って、爪先立って、少し無理して笑おう。
お名前

Mail Address

なにかありましたら

Coda©2007 Akira Goto.