Coda  about  log  antenna  

■2021/10/10 『太陽の影について』
 陽射しは見る間に失われ、夏は終わった。秋の始まりとともに僕はまた新しい職を得た。不安定な天候の中、蔭りゆく道々にくすぶり残る暑気に汗を滲ませながら、僕は黙々と職場へと歩いて通う。不快感しかなかった地域の仕事から逃れ、また子供たちと関わることが出来る仕事を選んだ。煩わしさは幾分緩んだ。

 太陽は翳り、また翳った。道を振り返り、幾度も繰り返し振り返り、まれに空を仰ぎ、嘆息して足元に視線を落としながら、失われたものをいくら考えてみても。そこには何一つ確信はないようだ。頭を抱え、激しく左右に振り、たやすく正気と正体を失いながら、誰かの真似をして大きな何かを頼ろうとしてみても。目前をよぎる雲の大きな影は景色をまだらに暗く染めて、何でもないような顔をして通り過ぎていく。

 石のようにあれば良かったのか? 風雨と時間に絶え間なく削り取られながら、やがて綺麗さっぱりと消え去ってしまえる時を切望しつつ、長い長い時間をひたすらに押し黙ったまま耐え忍んでいれば良かったのだろうか。扉を閉める時、そして施錠をしようとするときに、僕はいつでも悲しい気持ちになる。子どもたちはみな帰り、仕事は終わった。太陽は沈んでしまった。夜が来た。僕はいつまでも太陽の影について考えていた。

 始まりはいつでもこんな風だったのだろう。季節が変わろうとする時、振り仰げばいつでも雨が降りだしそうな空模様だった。太陽は翳ろうとしていた。僕は立ち上がり部屋を後にする。太陽は翳った。幼年期は終わった。そう、終わったのだ。

お名前

Mail Address

なにかありましたら

Coda©2007 Akira Goto.