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■2020/07/26 『梅雨明けを待たずに』
 記録的に長く続く梅雨の合間に、気まぐれのように覗いた青空に誘われて。素人仕事も甚だしく悪戦苦闘しながら先日なんとか修理を終えたばかりのバイクに跨って僕は久しぶりに走った。エンジンがかからなくなっていたYAMAHA YBR125とも気が付けばもう十年もの付き合いになった。十年前にはまさか自分がバイクを自力で修理できるようになるなんて微塵も思わなかった。それだけでも十年という時間は遠いと言ってしまって良いのだろう。どこか昨日のことのように思われるということは胸の内にそっと隠しておこう。

 四連休中だというのに人影は疎らで。世の中はまだまだ大いなる病の内にあって。空と、道と、歳月だけが僕の傍らを流れ去っていく。久方ぶりの陽光に照らされた緑の大地を眺め渡しつつ、時折空を仰ぐ。悪戦苦闘してどうにかこうにか直すことのできたバイクは嘘のように調子が良く、しずしずと誰もいない世界を滑っていく。広く長い農道に出て、その空と広大な田園の間に音もなく挟まれた時、僕は、何度も何度も経験してきたはずのそれに感極まり、思わず漏れる嗚咽を抑える術がない。

 僕は社会が嫌いだ。残念ながら抗うことのできるほどの力は持ち合わせていないから、一刻も早く消えて無くなりたいと常々思っている。僕は世界が好きだ。残念ながら言葉に出来るほどの才能は持ち合わせていないから、少しでも長く心に留まらせる術は無いかと探し続けている。この美しい空と、美しいと思うことのできる生命の不思議を胸に抱いて、僕はまた誰もいない道をゆっくりゆっくりと滑った。
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