log 2007
■2007/07/19 『夏はまだ』
 夏はまだ来ない。今にも降りそうでいて中々思い切らない空に、一つ悪態をついてからぼんやりと過ぎた季節を思う。去年の今頃はどこで何をしていたのだろうか。もう、はっきりとは思い出せない。そして、思い出せないということに悲観的な気持ちにもなりはしない。ただほんの少し虚しいような悲しみが胸を満たすだけだ。
 何かが変わったような。何も変わらないような。変わる予感がするような。社会的にはもう十分に大人だけど、その事にやるせない違和感を覚える。そんな中途半端な年齢の自分だ。失われていくのか、何かを補完して行くのか。本音を言えばどちらでも構わないけど、この場所が日々を生きていくうえでの何らかの記録になればと思っている。

■2007/11/12 『Rock』
 間抜け面を引っさげて年をとっていくんだ。ヨワイは齢か「弱い」か。健全なRockを聞けなくなっていつの間にか随分たつ。気軽なBGMとして流しっぱなしの垂れ流しにできていたあの頃は、まるで出来の悪い子守唄みたいだ。懐かしがろうにも、どうにもむず痒いって事だよ。分かるかい?
 無機質なビートに乗って無感動な日々を泳いでいく。僕のここ一年間は、僕をその五倍も衰えさせたね。くぐもったRockしか聞こえないような、ここは繁華街の外れのゲロ塗れの路地裏みたいな所だ。奇妙なことにそれが案外居心地良かったりもするんだよ。折角綺麗な新しい場所を用意したのに、言葉を捻り出す事もせず、もっと無機質になりたいだなんて怠惰なうわ事を繰り返してばかりで。あの国語辞典はどこにしまってしまっただろう。お気に入りのウォークマンは? あのアーティストのCDは? Rockそのものだったあの轟音は?
 飼い馴らされて、また空転。僕は膝を抱える。もう一度始めたいと思う。もう、何度目かも知れない再始動。世の中は相変わらずどうでもよくて醜悪で退屈で馬鹿げている。だから僕は釣りあがってくる年齢を道連れに、もっと下らない事をしよう。Rockを片手に。

■2007/12/09 『旅して恋してロックすりゃいいじゃん』
 あーあ、やっちまった。そら、言わんこっちゃねえだろ? 分かってたんだよ、はまっちまうってさ。一度はまっちまったら頭から離れなくなるってさ。あの気持ちを思い出しちまったら、もうどうしようもないって事もさ。なあ直美。15にもなれずに、声まで奪われて、それでも鋭い目で俺達を射抜いてた直美。お前ができなかったことを、歯噛みしながら諦めなくてはならなかったことを、世界にある、生きているこの瞬間の中にある、眩すぎて目が潰れちまいそうなこのキラキラしたものを、俺はまた取り戻すよ。忘れてた振りは、やっぱり長くは続かなかったみたいだ。ああ、火事の中に思い出を取りに飛び込んで、そのまま死んじまったあの子、最後まで笑ってたあの子。あの強くて儚い女の子。また記憶が増えたよ。どうしようもない。糞みたいな時間を越えて、それでも幸運なことに俺にはまだ両足と、両手が残ってた。旅に出よう。恋をしよう。ロックしよう。彼女達ができなかった輝きを掴みに行こう。明るい歌を抱えて、ギターと彼女が残した気持ちを詰め込んで、旅に出よう。いつまでもロックし続けよう。


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